日本人は繊細で手先が器用な民族と知られており、その特徴のひとつが物を包む梱包技術にあります。
人へ贈り物する、またお返しをするなどに紙を用いて梱包してお渡しすることが一般的です。贈り物やお返し物に大抵、梱包した包み紙の上から掛け紙を巻き、宛名を書きます。
縁起ごとなら「祝」など文字を書くことも珍しくはありません。
この掛け紙の事を熨斗(のし)と呼ぶ人も多いですが、実は熨斗とは掛け紙を指して使う言葉ではありません。
祝い事ならまだしも、香典返しやまた法事などの弔事に熨斗を使うと恥をかいてしまうばかりか、遺族や参列者へ礼を欠いてしまう可能性があります。
今回は熨斗とは何かという事について、解説して行きたいと思います。
香典返しに熨斗(のし)!?必要か!?



はーい。やってみるね。・・・えーと、夫のお葬式に参列してくださった方が300名、お香典の金額が総額400万でしたと。
400万!高い〜。お香典返しの金額もこの金額に見合ったものでないといけないわね!

はい、ワンアウト!ずいぶん大きな葬式を想像したのだろうけども。

え、ダメなの?まあいいや、次に行くわね。
私の夫は生前、知人にギフトを渡すのが好きだったからかしら?参列者が多かったのねえ・・・お返しが大変だわ。だけど、夫の面子も潰さないようにしないといけないわ。

さりげなく僕を旦那設定ですか。やるな〜。

お香典たくさんいただいたし、おいしいお肉でも贈ろうかしら。

早くもツーアウト!

…無視無視。
店員さん、お肉の送り先は大変お世話になった方々なので、立派な熨斗をつけてくださいな。

はい、スリーアウト!終了!

ええッ!?完璧な未亡人だったじゃん!!どうして!?
子供たちが空に向かい両手を広げ鳥や雲や夢を掴もうとするとか、なにかステップが抜けてた?

それは未亡人じゃなくて『異邦人』ね。そうじゃない、そうじゃないんだよレミちゃん・・・。
レミちゃんの香典返し、どこに問題があったのか皆さんはおわかりでしょうか。香典返しには色々なマナーがあります。
香典返しとは、遺族が四十九日を無事終えた報告と、ご香典のお礼を兼ねて葬儀参列者に贈るものです。一部地域では葬儀の当日に即日で香典返しを渡すこともありますが、四十九日の後に香典返しを贈るのが一般的なマナーとなります。
香典返しの金額は、 目安としていただいたお香典の3分の1〜2分の1程度の品物をお返しすることが多いです。いただいた金額に見あった品物を送る必要はありません。
また、肉や魚などの生物はマナー違反になるので避けたほうがいいでしょう。香典返しの基礎知識はこちらの記事も参考になります。
また熨斗とは縁起物につけるもので、香典返しには不要です。
葬儀を行った年は遺族は喪に服して、新年のご挨拶や年賀状のやり取りなども喪中という事で辞退するのが普通です。
参列者の長寿やご健康を願ったとしても、香典返しに縁起物の熨斗をつけて送るというのはマナーとしてNGになります。配慮を求めて辞退する側が、わざわざ縁起物の熨斗をつけて贈るというのもおかしな話ですよね。
熨斗(のし)とはなんなのか!?
店で贈り物を購入するときに「熨斗はおつけしますか?」とよく聞かれると思いますが、熨斗とはなんなのか解説しますね。
下の画像をご覧ください。
「賞与」という文字の横に、箸置きのような絵がありますよね。実はこの絵が熨斗なんです。

熨斗は、干したアワビをのして加工したもので、熨斗鮑(のしあわび)から来ている言葉とされています。
熨斗鮑(のしあわび)の製造は工程が長く、手間もコストもかかります。
まずアワビの肉を薄く削り、干します。琥珀色の生乾きにるまで干したところで、竹筒で押して伸ばします。更に水洗い・乾燥・押し伸ばしを何度も繰り返して調整して作るそうです。
日本では、アワビは長寿をもたらす食べ物とされてきました。
細く伸ばす工程から、寿命を延ばすという延寿(えんじゅ)と言葉遊び的な縁起もかかっており、熨斗鮑(のしあわび)は慶事や縁起ごとに使われてきた背景があるんです。
現代ではアワビは高級品です。縁起ごとのたびに熨斗鮑(のしあわび)を買っていたら、とんでもない出費となりますよね。
そのため徐々に簡略化されて、掛け紙に熨斗の絵を書くことで熨斗鮑(のしあわび)の代わりとなり、いつしかそれが一般的になりました。
つまり熨斗鮑(のしあわび)とは、縁起ごとや縁起物に使うもので祝い事や長寿を願い、見舞いなどに限定して使うというのが本来の役目です。

ちなみに今でも熨斗鮑(のしあわび)を販売しているお店もあって、購入することが可能です。
引用:兵古屋

へえ〜どれどれ。1000円から買えるんだ!…と思ってみたらのしがめっちゃ小さかった。普段コンビニで買っているものに比べたら高級品だね。
香典返しには掛け紙が必要!

香典返しに熨斗は不要だとすでにお伝えしましたが、知っておくべき大切なポイントがあります。
勘違いしている人も多いのですが、熨斗=掛け紙ではありません。
香典返しには、水引き(結び目)が印刷された、掛け紙が必要です。掛け紙をしないで香典返しを贈るのはマナー違反となります。
熨斗はいらないと聞いて、包装紙に包まれた品物をそのまま香典返しとして送らないよう注意しましょう。
地域によって、掛け紙の表書きは少し異なります。
引用:タカシマヤのご贈答マナー

なるほどね、熨斗=掛け紙じゃないんだー。熨斗はいらないけど、掛け紙は必要って覚えておくね。

うんうん。まあレミちゃんみたいに、勘違いしている人も多いんだよ。
熨斗紙と言ったりする場合もあるから、ややこしくてね。熨斗紙を略して熨斗だと思ってたりする人も多いから。
まとめ
熨斗の起源から、縁起物として使われてきた背景を元にお香典返しのマナーについて触れてきましたが、いかがでしたか。香典返しに熨斗は失礼に当るということが、お分かりいただけたのではないでしょうか。
慶事と弔事は、お祝いごとや他人にあった不幸を供にわかちあって、感情を共有する事から来ています。慶事と弔事では、喜び、悼(いた)み、弔(とむら)いなど共有する感情も意味合いもちがうのです。
葬儀の参列者に礼儀を欠いたお返しをすることは避けたいですね。

故人のためと参列いただいた方々のために、マナーを欠いてはいけません。これは弔事だけではなく、慶事などの儀式ごと全てにおいて言える事です。

うんうん。
(「異邦人」と「未亡人」って、響きが似てるよねと思ったけど。いい事言ってるみたいだから、空気を読んで頷いておこう。)

・・・。
(この子が口数の少ないときはロクでもない事か、くだらない事を考えているかのどちらかだな)
最後までお読み頂きありがとうございました。
葬儀は遺族の側でも参列する側でもマナーを意識し、場に合わせる行動が大切です。この記事があなたのお役に立てる事を願っています。
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じゃあ、レミちゃん!
久しぶりに学生時代を思い出してシミュレーション形式で、香典返しをどうするか考えてみようか。『夫に先立たれた妻が、葬式で喪主を務めて四十九日を迎えた設定』ね!