先日、知人から質問がきて少しやり取りをしました。


香典返しの熨斗には本来表書き、水引、名前がセットで書かれています。用意する側も余程の事がない限り、名前をどうするか聞いてくる筈です。そこをあえて名前を書かないという事は、何か特別な事情があったのかも知れません。
ところで、熨斗の表書きには何を書くのか、水引には何色なのか、名前は一体誰の名前を書くのかご存知でしょうか。更に、香典返しの熨斗は本当は熨斗とは言わない事をご存知でしょうか。
改めて聞かれると分からないという方の為に、今回は香典返しに巻かれているあの紙について、1つずつ丁寧に解説していきます。
こんな方におすすめ
- 香典返しの熨斗について知りたい方
- 熨斗に書く名前の書き方を知りたい方
- 熨斗にどうしても名前を書きたくない方
今回、知人は香典返しをもらう立場でしたが、いつか自分が渡す立場が来るかもしれません。香典返しのあの紙は第一印象を決める、いわば顔のようなものです。すっぴんで結婚式に出席しないように、きちんと整えてから相手に渡したいですよね。
香典返しを渡した方との関係が続いていく場合も多いでしょう。後々「あれは失礼だったよ」と言われて恥ずかしい思いをないようにしたいですよね。それから、知人の例の様に、あの紙に名前を書かない場合についても考えてみたいと思います。
そもそも熨斗じゃない!正式名称は「掛け紙」

引用:ハーモニック
実は、香典返しのあの名前や水引が描かれている紙の名前は、熨斗ではないんです。香典返しの際に用いるあの紙の正式名称は掛け紙と言います。
熨斗とは慶事の際に送る縁起物で事で、よくお祝いごとの紙やご祝儀袋の右上に書かれているものを指します。この熨斗が描かれている紙が、一般的に熨斗紙と呼ばれているものです。
慶事ですので一般的にお祝いごとに使用されます。よって、弔事である香典返しに掛けてあるあの紙は熨斗とは言いません。
対して掛け紙とは、贈答品全般にかけられる紙の名称です。高級なお弁当についているものも掛け紙と呼ばれます。慶事弔事に関係なく用いられます。ですので香典返しについているあの紙の名は、掛け紙と呼ばれます。
お店で「香典返し用の熨斗を付けて下さい」と言っても通じない可能性もあるので、注意が必要です。尚、香典返しの掛け紙は、一部仏教の葬儀では蓮の花が描かれているデザインもありますが、一般的には何も描かれていない真っ白な紙を使用します。
詳しくはこちらでも解説しています。
掛け紙に名前を書かない場合は存在するのか?考えてみた

大切な事なので何度も言いますが、香典返しの掛け紙には名前は必ず必要です。なぜなら、名前を書くことによって、受け取り側に誰に送った香典のお返しなのかを示しているからです。
例えば、あなたが立て続けに葬儀が続いたとします。四十九日法要に出ない場合、香典返しは配送されてくるのが一般的です。その時に掛け紙に名前がなかったらどうでしょう。「果たしてこれは一体だれから頂いたものだろう」となりませんか。
配送の伝票に書かれている名前から判断できる時もありますが、それがあなたの知らない人だったら、結局誰から送られてきたか分かりませんよね。
誰からの香典返しかわからない者を、あなたは受け取る事は出来るでしょうか。もしかしたら詐欺かもと怪しんで、受け取り拒否をされる方もいるでしょう。せっかく送った香典返しが返っては、相手も困惑してしまいます。
双方の印象が下がってしまい、香典返しを期に連絡が途絶えてしまうかも知れません。そういう事態を避けるためにも、香典返しに名前を書くことは必要な事なんです。
香典返しについて不安な方は専門サイトを利用することでサポートを受けることができます。香典返しの「おこころざし.com」は香典返しのスペシャリストなので、きめ細かいサービスを受けることができます。
しかし先日の知人の話では、香典返しの掛け紙に名前がありませんでした。もし、香典返しに名前を書かなかった事が忘れた訳では無いのであれば、何か名前を書かなかった理由があるのかも知れません。
ここからは、あえて掛け紙に名前を書かない場合について考えてみたいと思います。
家族葬などの小さな葬儀の場合
家族や気心の知れた親しい親族で故人を送った場合、誰からの香典返しかが分かり、且つ親しい間柄なので名前が無くても問題ないかも知れません。
その場合、香典返しも形式ばったものではなく、双方が納得した好きな品を送ることが出来ますね。掛け紙も不要であれば無くても良いでしょう。
しかし、これには注意点があります。それは必ず双方が了承している事です。例えば家族で故人を送り届けた後、故人の友人から香典を頂いた場合はこの限りではありません。
予め名前が無い事を伝えて置くのも一つの手ですが、やはり友人の香典返しには名前を書いた方が良いでしょう。
当日返しの場合
当日返しとは、葬儀に来ていただいた方にその場で香典返しを渡す事です。今回の知人の例は当日返しですね。この文化は、関東や東北地方から始まり、今では新たな文化として定着しつつあります。
当日返しの場合も「誰からの香典返しか分からない」という問題が解決されますね。なぜなら今葬儀に参列している故人へ送った香典のお返しだからです。その為一部の葬儀では、香典返しに名前を書かずに渡しているようです。
この場合でもマナー意識が高い方など、一部の方は不快に感じられるかも知れません。その場で注意を受けたり、後日関係がこじれる事も考えられます。
今はそういう時代だと割り切ることも可能ですが、ただでさえ故人の悲しみにくれている最中だと言うのに、余計な事に時間を掛けたくないですよね。
苗字が途絶えた場合
本来葬儀の喪主はその苗字の後継者であるとお伝えしました。しかし、子供が居なかった等の理由で苗字が途絶えてしまう事もあります。
本来であれば喪主の苗字である故人とは別の苗字を書くのですが、一部地域ではあえて名前を書かずに「志」や「満中陰志」のみで香典返しをする地域もあるようです。
掛け紙に名前を書かなかった場合、挨拶状に名前を書くことによって誰からの香典返しであるかを示しているそうです。
この場合、同じ文化圏にいる人は分かっても、その文化の外で生活している人にとっては失礼に感じるかも知れません。もしこの文化を知らない相手に渡す場合は、理由を添えてお渡しすることをおすすめします。
掛け紙には何が書かれているのか?1つずつ解説します

香典返しに巻くあの紙の名前が掛け紙という事が分かったところで、次は紙に書かれている内容を1つずつ解説していきます。掛け紙には、一般的に以下の3つのものが書かれています。
- 表書き
- 水引
- 名前
図にもありますが、上の言葉の事を表書き、真ん中のリボンのようなものを水引、その下に名前を書きます。表書きと水引は、それぞれに地域差や宗教差があります。また名前も故人との関係が複雑な場合に書き加えたりします。
それぞれの組み合わせもあり難しそうですが、これからしっかりと説明していきますので、安心して下さい。また、それぞれに一般的なパターンを紹介します。ですので、迷ったら一般的な物を使用すると良いでしょう。
もし地域差など現地に合わせたい場合は、親族や葬儀社など周りの方に質問しましょう。
表書きには何と書くのが正解?
掛け紙の上半分に書かれている文字が表書きです。表書きは地域や宗教によっていくつかの言葉が使い分けられています。自分の住んでいる地域や宗教に応じて使い分けが出来ると相手に対してより良い印象を与えることが出来ます。
「志」一般的な表書き
一般的な香典返しに用いられている表書きです。志とは、”心に決めたこと”という意味の他に、”謝意”や”好意”を表す言葉です。香典返しの中では「ほんの気持ちですがどうぞ」という意味が込められています。
香典返し以外にも、法事の引出物、お坊さんのお布施の包み紙などにも書きます。
「満中陰志」関西以西で使われる表書き
関西より西の地域、西日本の香典返しで一般的に用いられている表書きです。仏教では人がなくなってから四十九日間を「中陰」と呼び、四十九日が開けると「満中陰」と呼び名が変わります。
香典返しを送るタイミングは、一般的に四十九日明けに送るとされており「あなたが気にかけてくれたお蔭で四十九日が無事に開けました。心ばかりのお礼です」と言う事を表しています。
たった四文字でこれだけの思いを表すことが出来るというのは凄いですよね。こちらは志と異なり香典返しの時だけに使います。
「茶の子」中国・四国地方、九州地方の一部で使われる表書き
中国・四国地方、九州地方の一部地域で用いられているの表書きです。茶の子とは、お茶請けのお菓子の事を指しています。それが転じて、香典返しにも使用さる様になったようです。
茶の子と言う言葉ですが、香典返しに必ずしも中身はお菓子でなければ行けないという事は無いようです。
「偲び草」神教、キリスト教で使用する表書き
神式やキリスト教の香典返しに用いられる表書きです。「故人を偲ぶ気持ちを粗品に変えて、あなたに送ります」という意味があります。こちらも満中陰志と同様に、香典返し専用の言葉のようです。
水引は地域によって色が違う?
引用:ハーモニック
水引は地域によって、使用する色が異なります。そもそも水引は何故書かれているかご存知ですか。実は水引には未開封、魔除け、人々を結びつけるという意味があります。
そして、結び方にも色々ありますが、香典返しに使用する水引の決まりとして結び切りという結び方をした水引を使用します。理由は蝶々結びの様に解けないので同じことを繰り返さないと言う意味から転じて、「ご不幸が繰り返されませんように」という思いが込められています。
色は一般的には白と黒ですが、関西や北陸地方の一部地域では白と黄色を使用します。白と黒は葬儀などにも使用されていて馴染みがありますが、なぜ関西などの一部地域では黄色を使用するのでしょうか。
この理由は、日本古来の染料の影響だと言われています。
衣装などを染める時により高度な技術を要する色や、染料の原料自体が高価なもの程珍重され、格式・地位が高いものとして扱われてきました。格式・地位が高い順として「金」「銀」「紫」「赤」「藍」「緑」「黄」「黒」となり、冠婚葬祭の行事としては婚礼儀式が最も高く、弔礼儀式が最も低い行事とされてきたのがそのまま水引の色として反映されてきたとされています。
この話によると黄色は黒色より一段階高い行事に使用されています。香典返しは四十九日明けに送るとされていますから、「四十九日を無事に終えて喪が明けました」と言う意味を込めて、黄色を使用しているのではないかと考えられています。
言葉だけではなく、色でも喪が明けた事を表せるなんて、日本の文化は興味深いですね。
名前は喪主のフルネームか苗字、困った時はこうする!
表書き、水引の次はいよいよ名前について解説します。香典返しに名前を書く理由はそのままで「香典返しを送ったのは私です」ということを示す為です。香典返しの掛け紙に書く名前には決まりがあります。ポイントは、喪主が誰であるかということです。
- 喪主のフルネーム
- 喪主の苗字
- 喪主の苗字 + 家
喪主とは本来、故人の家を次に継ぐ者がなるとされており、つまり喪主の名前を書くことは故人の苗字を書く事と同意となり、誰の葬儀の香典返し化を表しています。もし、親族が複数で葬儀をあげた場合は横に親族一同と書添えると分かりやすいでしょう。
しかし、時代の変化と共に、これには当てはまらない場合が増えてきました。例えば喪主が故人の娘だが、結婚して嫁ぎ先の苗字になっている場合は、故人と喪主の苗字が異なります。
喪主本人が全ての香典返しを渡し、その時に説明すれば良いのですが、最近は香典返しを郵送で送る文化もあるので、全ての香典を喪主が直接渡すわけではありません。他にも、事実婚や内縁と言った複雑な理由から、故人と喪主の苗字が異なる事があります。
実際に、香典返しの名前を誰にすれば良いのか、質問も上がっています。
実母が亡くなりました。喪主と施主は 実父です。私は、結婚して苗字が変わっています。(中略)香典返しの のしの送り主の欄は、誰の名前を書けば良いですか?実母の苗字ですか?結婚後の私の苗字ですか?
引用:Yahoo!知恵袋
実母が亡くなって、喪主が実父という事は、香典返しは前の苗字で名前が記載されています。しかし、質問者の友人など、前の苗字では相手に伝わらない場合もあるでしょう。この場合、横に括弧書きで今の名字を書添えると、相手に伝わりやすいでしょう。
上記の例を応用します。今度は実父が亡くなって自分の夫が喪主をする事になりました。その時は、香典返しはこの方の今の名字になります。しかし故人しか知らず、新姓で相手に伝わらないと感じた場合は、横に括弧書きで前の苗字を書くと、相手にも伝わりやすいでしょう。
重要なことは、受け取りて側に誰の香典のお返しであるかが分かることです。その為には、書添える事はあっても、空白にする事は避けましょう。空白にすることで、かえって相手に混乱を招く恐れがあるからです。
まとめ
さて、今回は香典返しの掛け紙について解説しました。
- 香典返しの掛け紙には表書き、水引、名前がある
- 表書きと水引には、それぞれ地域差や宗教さがある
- 掛け紙は喪主の名前を書くが、それだけでは相手に不十分な場合、関係性を書添える
- 基本的には掛紙に名前は必要
今回は掛け紙のそれぞれの意味、名前の書き方が分かりましたね。また、掛紙に名前を書かなければならないということと、それを書く理由は、相手に「誰の香典のお返しか」示す為だということも分かりました。
一部書かない場合もありますが、その場合も今はそういう物と割り切るか、失礼に当たりそうな相手には説明する必要がありそうですよね。
因みに、先日の知人の件は後日理由が判明しました。家族葬で、まさか外部の人間が来るとは思っていなかったようです。やはりどの様な場合でも掛け紙には名前を書く必要がありそうですよね。
以上になりますが、みなさんはいかがでしたでしょうか。これで、各ポイントを抑えて大丈夫な状態になりましたでしょうか。この記事が読者の方の円満な関係を築くものになっていただければ幸いです。最後まで読んでいただきありがとうございました。
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